「防災備蓄を持って、水族館で2泊3日過ごしてみた。」(岡田敏和)

remember117

12月中旬、街中ではイルミネーションでクリスマスムードが漂う中、僕は2泊3日の擬似的な避難生活をおこなった。

自称防災マニアを名乗っている僕が備蓄している装備で2泊3日の間、どういう生活を送ることになるのか実験するためだ。

■今回のルール

水は500mlペットボトル×9本(足りなくなったら浄水ストローを使う)

電気はモバイルバッテリー・手回し充電器・ソーラーパネルを使用。

インターネットに接続するのは連絡時のみ。

■今回持ち込んだもの

アルファ米 5食、水500ml×9本、缶詰パン 1食、レトルトカレー 1食、缶詰 4食(シーチキン、たまご入り焼き鳥、牛肉の大和煮、かれいの中骨煮付)、カロリーメイト×1、手回し充電器、ソーラーパネル、ランタン、ラジオ、浄水ストロー、ラップ、軍手、携帯カイロ、ボディーシート、着替え類

 

 

 

▶︎1日目

13時頃、普段から用意している備蓄をベースにして、荷造りを始めた。

「自分が持ち運べる量」ということを考えて本当に必要だと思ったものだけを入れていったが、既にリュックもスーツケースもいっぱいでかなり重い。

外の気温は13度で肌寒いと感じたが、荷物を家から最寄りの海老江駅まで運ぶだけで汗をかいた。

 

17:00(室温18度)

今回の実験をおこなうにあたりご協力をいただいた須磨海浜水族園(以下、スマスイ)に到着。

舞台はスマスイのエントランスホール。

閉館後ということで既に来園者もおらず、館内は静かだった。

正面の大水槽ではエイやサメが泳いでいて、左にはクリスマスツリーが見える。

なんだか既に寂しくなってきた。

気を取り直し、3方向を大水槽前のコタツ、クリスマスツリーに挟まれた場所を拠点に決める。

大水槽の前はなんだか、とても水族館の香りがする。もしかしたら帰る頃には水族館の香りを纏っているかもなぁ。

そんなことを考えながら、持ってきたスーツケースを物置きにして、その周りに持ってきたグッズを並べた。

 

18:00(室温18度)

既に薄暗かった館内が消灯になり、ほぼ真っ暗。

ダンボールの上に寝袋を敷いて一度、仰向けに寝てみる。

左を見ると真っ暗闇。右を見るとほんのり明るい大水槽。ウミガメが泳いでる。

目を閉じて耳を澄ますと、なんだか大量の水が流れる音が聞こえる。

 

19:30

そろそろお腹が空き始めた。よく考えたら朝からバタバタしていて何にも食べてない。

ここへ向かう電車の中で、初日の夕食はチキンライスにしようと決めていた。

アルファ米セットを購入したときから、本当に「チキンライス」と呼べるものが作れるのか気になっていたのだ。

ということで、さっそく準備(と言ってもアルファ米と水を用意するだけだが)

まずは作り方を確認する(実はアルファ米を使うのは今回が初めて)

  • 1 封を開ける
  • 2 袋から調味粉末やスプーンを取り出す
  • 3 調味粉末とお湯・水を入れてかき混ぜる
  • 4 お湯の時は15分。水の場合は60分待つ。

え、アルファ米って水で作ると1時間もかかるんか

知らんかった。

さすがにお腹空きすぎて1時間も待てないので今日はカンパンを食べることに。

災害用備蓄といえばこれだよね。

一人暮らしをしていた頃をしていた頃、家に食べ物が無くなった時によく食べていたのでなんだか懐かしい味。

と思ったのも最初の数枚で。味に変化をつけるためにジャムでも持ってくればよかったなと思う。

 

20:00 (室温20度)

静まりかえったエントランスで、遠くの方から撮影担当のカップラーメンをすする音が響く。

(今回の体験では1人で過ごすということを目的にしているので、撮影の時以外は会話はなし)

突然クリスマスツリーが点灯してビビる。

今日のうちにグッズ紹介をしようと思ったけど、想像以上に館内が暗いため明日おこなうことにした。

いつもなら寝る前にお風呂に入るところだけど、今回は当然そういったものはないのでボディーシートで体を拭く。

実際に被災したことを考えると断水でトイレの水が流れないことも十分にありえるし、トイレが普通に使えるだけでもありがたい。

トイレ電気が消えて真っ暗なので結構怖いけど。

水族館っぽい香りと、大量の水が流れる音を嗅覚と聴覚で感じつつ就寝。

 

▶︎2日目

07:04(室温19度)

起きる。目を開けるとサメが泳いでるのが見えて、水族館に来ていることを思い出す。

横のクリスマスツリーも点灯していた。

寝る前にスマホをを見なかったのは久々で熟睡できたんだけど、ダンボールの上に寝袋を敷いてるだけだったので身体中バキバキになっていた。

 

09:30 

二度寝してたらなんだか気配を感じる。

起きると、目の前の水槽で職員の人がウェットスーツのようなものを着てガラスを拭いていた。

このまま寝ているのも恥ずかしいので起きる。

朝食はパンダのパッケージに入った缶詰のパン。

パンだ。ってことね。

こういうノリ大好きだけど、今は一緒に笑える人もいない。

缶を開けてみると意外とぎっしりパンが詰まっていた。

もしかしたらめちゃめちゃパサパサしているのかなと思ったけど、その通りで動画レビューするときに一口食べて、あまりの乾燥に言葉が出せなかった。

味はほのかに甘い、非常にシンプルなパンでした。

贅沢なのはわかってるけど、おかずがほしくなった。

 

11:00(室温19度)

今のところ困ったことはないが、孤独な環境がジワジワ効いてきた。

時々エントランスホールを通る業者の方々に見られ、でも話かけることもできない。

という状況の中、「ぼく、何やってるんだろう」とか思いながら、現在までのレポートをまとめる。

 

12:00

そろそろ昼食の時間。調理に水で1時間かかることを思い出す。

昨日食べられなかったチキンライスをメインに、焼き鳥・たまごの缶詰をチョイス。

鳥のフルコース。

チキンライスのパックに入っていた調味粉末を入れて、かき混ぜている時点で既にチキンライスのいい香りが。

初のアルファ米ということでちょっとテンション上がってきた。

このまま1時間ほど待つ。

 

12:30(室温21度) 

撮影に使っていたスマホのバッテリーが18%に。

待っていました。

ちょっと得意げな感じで、スーツケースの中から手回し充電器を取り出す。

災害時では通信手段や電気というのも非常に重要になってくるはずなので、そこで手回し充電器を持っていたらヒーローだろ、と備蓄していたグッズ。

初めて使うのでドキドキしながら、手回し充電器とスマホを接続する。

回してみる。

あ!充電マークついた!

これはいけるぞ。ということで10分間全力でハンドルをブン回してみてどこまで充電できるかチャレンジ。

昨日からあまり動いてなかったし、有り余る体力でブン回します。

3分ぐらいで腕が痛くなってきました。

しかし、脳内では充電が30%になって実験成功を祝う姿が想像できてるので、手は緩めません。

6分経ったあたりでしょうか、視界の隅で「このアクセサリは使用できません」という表示が見えました。

嫌な予感がする

10分が経過

結果、18%。

変わりませんでした。

手回し充電がダメだったので、次はもう一つの充電手段のソーラーパネルを使うことに。

12月中旬の、しかも室内からということで、ひょっとしたら使えないんちゃうかと思いつつ外から差し込む光に向けます。

ちゃんと充電マークがついたことを確認して10分間放置。

15%→12%

ダメでした。むしろ吸い取られてるんちゃうか疑惑が。

そんなことをしているうちに、水で調理していたチキンライスが完成。

めっちゃ簡単。

パックを開けるとご飯がぎっしり。

朝食べたパンもそうだったけど、割とボリュームあるね。ありがたい。

しかもちゃんとチキンライスになってるし、缶詰もタマゴが丸ごと入っていて

なんだかすごく豪華に感じた昼食。

 

17:00(室温20度)

これまでの防災グッズ実験ではことごとく惨敗だったの、リベンジすることに。

今回使うのは浄水ストロー。

ちょっとくらいなら汚れたものも飲めるようになるらしい。

というわけで、まずは普通の(トイレ)の水道水を汲んできて飲んでみた。

ハミガキするときにもつかってきたので、飲んでも問題ないと思いつつ、トイレの水と考えると正直気分的にはキツい。

飲んでみる。

濾過するためか、普通のストローのようにはいかず、ちょっと強めに吸わないと飲めない。

いや、味変わらん。

無駄に気分だけ下がった。

さすが「変化なし」だけじゃ終われないので、撮影担当からかなり甘めの紅茶を提供してもらって実験。

今度は結構わかるくらいに味が薄くなった。

初めてまともにグッズが使えた気がして、ちょっとうれしい。

 

18:00

太陽がないので昼なのか夜なのかという感覚を失いつつも夕食の準備を始める。

白飯とレトルトカレー、そして、かれいの煮付け缶詰。

カレーで統一してみたんだけど、一緒に笑ってくれる人がいない。

昼間は気づかなかったけど、水で作ったからかお米に少し芯が残っている気がする。それでも、おいしい。

レトルトカレーはお肉がたくさん入っていて、冷たいままでもおいしい。満足。

エントランスホールの中を散策。

今までトイレに行くときくらいしか動き回らなかったので、改めて周辺を見て回ることにした。

途中、館内のロッカーに絵しりとりが書かれているのをみつけたので挑戦してみる。

4つ目でわからなくなった。

 

19:00

人の声が聞きたくなり手回しラジオをつける。

ノイズだらけの中で、まともに電波が入る場所を見つけるのに苦労した。

 

20:00(室温 20度)

リメンバー117とビデオ通話で状況報告することに。

ほぼ丸1日、人とまともな会話をしていなかったので少し楽しみ。

スマホでビデオ通話を開始すると、いつものメンバーの笑顔が。

晩ご飯の話だったり、使ってきたグッズの説明をしただけだったけど、急に寂しさが溢れてくる。

食べ物も飲み物も、今のところ持ち込んだ分で足りてるけど、人とのコミュニケーションは足りてなかった。

 

20:30

いつの間にか消えていたクリスマスツリーが再び点灯。

 

20:50

クリスマスツリーの灯りが消える。

ここにやってきて丸一日が経った。

寝袋に入って、今日のことを振り返る。

ずっと避難所体験の企画を考えていたので、ここに来るまではワクワクしていたのに、実際に過ごしてみると慣れない環境のせいか結構疲労を感じる。

ボディーシートは使っているけど、お風呂に入れないとやっぱり頭もかゆいし。

明日の朝には帰れるのか、と思うと少し安心した。

 

▶︎3日目

06:30(室温18度)

掃除機の音で目が覚める。

既にエントランスホールでは朝の清掃が始まっていた。

ほぼ室温一定だったこの場所も、今朝はちょっと寒く感じた。

もう既に職員の方も来られているので、早く片付けを行わないといけないのだが最後に1つだけ考えていたことが。

ずっと冷たいものだけ食べてきたから最後は温かいものを!ということで急いでお湯をもらってきて味噌汁を作る。

あまり味わう時間も無かったけども、やはり温かいみそ汁は格別でした。

 

避難所体験を終えて…

スマスイの建物を出た瞬間、明るい日差し、道路を行き交う車を見て、社会に戻ってきたと強く感じた。

過ごした時間は38時間程度だったけども、体感としては実時間よりもずっと長かった。

今回は自宅で普段備蓄しているものを避難所に持ち込むという想定だったが、災害時には家に備蓄を取りに戻れないことも多いはず。

実際の避難所生活は食べ物もなく、トイレも流れなかったりと、もっと過酷に違いない。

そのことを考えると、今回の体験は甘すぎると自分でも感じる。

だけど実際に2日3日を過ごしてみたことで、普段の社会から離れ防災グッズの見直しなども考えることができたし、今回この企画を行えたことは本当に嬉しい。

そして、この体験を終えた12月19日、青森県で震度5弱の揺れがあった。

いつ起こるかわからない災害に備えて、僕はこれからも自称防災マニアを続けていこうと思う。

副園長の大鹿達弥さんと。

協力:神戸市立須磨海浜水族園

▶︎前回の記事 防災系男子の憂鬱(岡田敏和)